2005年、第二回ビエンナーレKAZE国際演劇際で初演されたこの作品は、スロヴァキア共和国に生まれ、現在はドイツに在住するマイムアーティスト、ミラン・スラデクによって演出されました。2009年の再演でミラン・スラデクと芸術監督である浅野との共同演出となり、正式なレパートリーとなりました。

 「三文オペラ」は、18世紀にイギリスの作家ジョン・ゲイによって書かれた「乞食オペラ」を翻案した作品であり、ブレヒトの代表作です。
“乞食や娼婦、大泥棒たちが大都会の暗闇を、また犯罪の世界を生々しく反映し、ブルジョア社会が生み出した秩序を嘲笑し、人間の欲望や怠惰、そして社会のからくりを痛烈に風刺する”
 様々な人々が住み、生きている都市。「三文オペラ」の登場人物は、盗賊団、乞食、娼婦など社会の底辺にいる人々です。騙し合い、賄賂で繋がる彼らの生活を、生き生きと描き出しながら、「きれいごと」の社会を痛烈に批判していく。
 ブレヒトは舞台での出来事は現実離れした世界であるとして観客を引きずり込むのではなく、社会状況を観察するべく観客に刺激を与えます。この作品に描かれている社会や人間の状況はブレヒトの時代、そして時代を超えて今日にも通ずる普遍的なものです。

 東京演劇集団風の「三文オペラ」はマイムの要素である「身体」を使って作品を読み込み、ブレヒトが巧みに使う「言葉の韻」を探しながら作品を描きます。社会・政治・娯楽・人間……。顔を白塗りにした登場人物は道化のように物語を演じ、社会を見据え突きつけるかのように現実を表し、観客や時代と真正面から向き合うことを試みます。

作:ベルトルト・ブレヒト
訳:岩淵達治
演出:浅野佳成
振付:ミラン・スラデク
音楽:クルト・ワイル
編曲:八幡茂
舞台美術・衣裳:
ヤン・コッツマン