「星の王子さま」が書かれたのは、1943年。地球上では「第二次世界大戦」という悲惨な戦争の渦が、世界中の人々を苦しめていたときです。作者であるサン・テグジュペリは飛行機乗りであり、当時世界中を空の上から見つめながら様々なことを感じていたと思います。大自然に生きる動物や雄大な景色、完全な暗闇に光る一点の星の明かりが命をつなぐ存在だったり、人間たちがお互いに憎しみあい、傷つけ合う悲惨な現実もいやというほど見てきたでことでしょう。そのような時代で作者は、親友のため、又世界中で苦しんでいる人、あとから生まれてくる人達にメッセージを送ってくれたのだと思います。「光と陰」の世界に生きるすべての人達にとって、「星の王子さま」は人間社会の厳しい現実や、はかなさを痛感するのと同時に、夢と希望を持ち続けながら人々がふれ合うことの大切さを意識させてくれます。

 風の「星の王子さま」は、およそ1500ステージの上演を重ねてきました。劇団創立以来最多の公演を行っている「星の王子さま」は、劇団にとって特別な作品です。フランスのガリマール社の方々や、サン・テグジュペリの遺族の方、それに学校公演で出会った先生方や生徒たちと共に試行錯誤を重ねながら、「今のとき」にわたしたちが何をすべきかを考え、王子さまの世界を創り続けています。

 文化庁主催の「本物の舞台芸術体験事業」で行っている上演では、小・中学校の生徒たちが芝居に参加し、全校生徒と王子さまたちが作品を創ります。児童や生徒たちの王子を励まそうとする純粋な歌声やセリフは、私たちにも大きな勇気と感動をあたえてくれます。王子の世界の中には、キツネが王子におしえる「大切なことは、目にみえないんだ」というセリフのように、考えさせられることが、多くちりばめられています。世界中の「星の王子さま」にふれるひとたちにとって、人間が生きていくときに、何が大切なのかをこの作品が気づかせてくれると信じて、私たち風は、「星の王子さま」の上演を創り続けていきたいと考えています。

作:サン=テグジュペリ
訳:内藤濯
構成・演出:浅野佳成
音楽:八幡茂

上演協力:
サン=テグジュペリ財団