……町は火の海、悲惨の極み……
廃墟となった世界で、ひとりの歌手が語る、
関節が外れた時代を生きた人間のふたつの物語

反乱が起き、町を治める領主が倒された復活祭の日曜日。戦地に赴く許婚の帰りを待つ女中グルシェは、善への誘惑に負け、領主の赤ん坊を背負い込んでしまう。厳しい冬のなか、追っ手や餓えから逃れるため、彼女と赤ん坊ふたりきりの旅が始まった。
一方、反乱が起きたその日に、偶然にも裁判官にさせられてしまった、村役場の呑んだくれアツダク。賄賂をふところにイカサマ判決を下し、貧しい者にも正しい裁きを与える彼は、人びとに束の間の正義の時代をもたらした。
それぞれが違う道を辿ったグルシェとアツダクは、子どもをめぐって開かれた裁判の席で出会うこととなる……
戦時中の1944年、アメリカ亡命時代の最後の作品に、詩人ブレヒトが希望を託したひとりの女とひとりの男。全く異なるふたりの人間の交差が、不可能が可能となる、ひとつの世界を切り拓く―

マテイ・ヴィスニユックの書下ろし『なぜ ヘカベ』など、コロスや仮面を用いて演劇的可能性を深めてきた演出 江原早哉香が、日本、フランス、レバノン、ポーランドの舞台芸術家(スタッフ)と共につくりだすブレヒト劇。コロスの集団性、さらにパペットの批評的造形を駆使し、現実には絶えず破れながらも、歌い、笑い、生きていく人びとの物語を描く。

作:ベルトルト・ブレヒト 
翻訳:岩淵達治
演出:江原早哉香
 
作曲:パウル・デッサウ
cSUHRKAMPVERLAG
音楽制作:八幡茂
舞台美術:高田一郎
衣裳:ズザンナ・ピョントコフスカ
人形美術:エリック・ドゥニオー
〈Le Collectif Kahraba〉
演出助手:オーレリアン・ズキ
〈Le Collectif Kahraba〉
照明:坂野貢也 
音響:渡辺雄亮
舞台監督:佐田剛久
歌唱指導:八幡光子
芸術監督:浅野佳成

【出演】
白根有子/柳瀬太一
栗山友彦/佐野準
柴崎美納/工藤順子
田中賢一/白石圭司
佐藤勇太/車宗洸
稲葉礼恵/清水菜穂子
酒井宗親