東京演劇集団風の〈バリアフリー演劇〉

東京演劇集団風は2019年から、視覚・聴覚障害の当事者の方たち、障害者施設職員の方たちと研究会を重ね〈バリアフリー演劇〉の試みを開始しました。同年に劇団の代表作『ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち』『星の王子さま』、2021年には『Touch~孤独から愛へ』をバリアフリー化し、2020年から全国の小中学校や、視覚・聴覚支援学校、特別支援学校においても公演を行っています。

舞台手話・字幕・音声ガイドの情報保障に加え、あらゆる人が舞台に触れて、劇空間をイメージできるバックステージツアーや舞台説明、出演者の自己紹介、俳優・スタッフとの交流などを行い、見て、ふれて、感じる実体験を大切に上演を行ってきました。

現在バリアフリー演劇は障害支援施設や特別支援学校だけでなく、全国各地で実施され、「障害を持つ家族と一緒に楽しむことができ、初めて演劇の感想を話し合うことができた」「手話や音声ガイドなど、いま社会の中で必要とされている人との相互理解について、改めて考えられる機会になった」などの感想も寄せられました。「人間の多様性や違いを理解し、共に生きる豊かさを学ぶ場」「インクルーシブ教育」「思いやりの心を学び、ひとりひとりが輝く教育」など、共生社会の学びのひとつとしても、捉えなおされています。

バリアフリー演劇の試みは障害の有無、地域や経済的な環境の格差に関わらず、すべての人たち、子どもたちが自由に芸術を体現し、それぞれの感性や可能性を発揮するための、新しい芸術の実践となっています。

■ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち

作 松兼功 演出 浅野佳成
幼い頃から、見えない、聴こえない、話すことができない障害のあるヘレン・ケラーと、彼女に生涯寄り添った家庭教師アニー・サリバンの物語。互いの可能性を信じて諦めない心が、家族を巻き込み、新しい扉を開いていきます。
巡回公演では子供たちが指文字と手話で共演する、参加型の上演も行っています。

作品の詳細はこちら

■星の王子さま

作 サン テグジュペリ 構成・演出 浅野佳成
たった一輪の花と自分の星に暮らす王子さま。ある日、花とけんかをして、星をめぐる旅に出ます。王子さまは「かけがえのないもの」「目には見えない大切なもの」があることを知り、成長していきます。美しく力強く生きる少年の姿を描いたファンタジー作品です。
子供たち、先生も出演してみんなでつくり上げる、参加共演型のミュージカルとして上演を繰り返しています。

作品の詳細はこちら

■Touch~孤独から愛へ

ふたりきりで暮らす孤児の兄弟のもとに、突如現れたひとりの紳士。彼は「元気づけてあげよう!」と声をかけます。人のぬくもりや、自分を励ましてくれる人の存在、大切な人との出会いを通して、ふたりはそれぞれの道を踏み出していきます。

作品の詳細はこちら

◇誰もが一緒に舞台を楽しむ情報保障
バリアフリー演劇の舞台には、舞台手話・字幕・音声ガイドなどの情報保障が織り込まれています。台詞や動きと同時にスクリーンに映し出される「字幕」は舞台装置の一部となり、「舞台手話役者」は俳優と共に動いて、演技します。また会場全体には、舞台の進行に合わせてライブで「音声ガイド」が入り、視覚・聴覚障害の方や子どもたちも一緒に楽しめる舞台になっています。

◇見て、ふれて、感じる―舞台体験と交流
開演前には舞台説明を行い、この演劇が「すべての人がともに楽しめる舞台」であることを伝えながら、舞台の広さや、舞台の構造を説明し、俳優の紹介を行います。また舞台上ではバックステージツアーが行われ、障害のある人もない人も観劇する舞台のイメージを深められるよう、自分の手で俳優の衣装や小道具にさわる、目で見て、肌で感じて道具の仕組みにふれる体験を行っています。

バリアフリー演劇総合監修:尾上浩二
バリアフリー演劇芸術監督:北岡賢剛

舞台手話通訳監修:河合依子
音声ガイド監修:大河内直之
字幕監修:廣川麻子
字幕・音声ガイド 制作:Palabra (株)
プロデュース: 山上徹二郎
照明:板野貢也/江田健
音響:酒見篤志/上田舞子
舞台監督:佐田剛久