ギリシア悲劇「ヘカベ」を題材にした、フランスの現代作家マテイ・ヴィスニユックによる書き下ろし
廃墟から響くヘカベの叫びに、いま私たちは何を聞くのか……

ヘカベはトロイアの王妃として栄華を誇り、多くの子にも恵まれながら、ギリシアとの戦争によってそのすべてを失う。19人の息子は戦乱に斃れ、自らは敵将の奴隷となり、生き残った最後の息子と美しい娘もまた、伝統としきたりの犠牲となって命を落とす。
世界の不幸という見世物を味わう神々、壁となって立ちはだかるコロスたちのなかで、彼女の問いは掻き消されていく……。

ルーマニア・チャウシェスク政権を逃れて亡命したフランスの現代作家マテイ・ヴィスニユックが劇団に書き下ろした、絶滅戦争で残された最後のひとり……ヘカベの物語。
演劇のはじまりを問い、悲劇を現代と切り結ぶ演劇として蘇らせる〈風の新しいギリシア悲劇〉として、作家のインスピレーションの源となった辻由美子のヘカベ、コロスの演劇的造形を鍛えてきた江原早哉香の演出によって取り組んでいるレパートリー。
詩人の想起するまなざしが、ひとりの女性の魂の叫びを、今なお悲劇を繰り返す私たちに物語る。

……もしすべてが愛から生み出されたのならば、
                        どうしてこれほどの苦しみが存在するのだろう……

作:マテイ・ヴィスニユック
翻訳:谷島貫太
演出:江原早哉香
舞台美術・衣裳:
アンドラ・バドゥレスコ
作曲・音楽制作:
バンジャマン・クルシエ
〈Theatre du Menteur〉
照明:フランソワ・シャファン〈Theatre du Menteur〉
仮面制作:エリック・ドゥニオー〈Le Collectif Kahraba〉
音響:渡辺雄亮
舞台監督:佐田剛久
照明オペレータ:坂野貢也
舞台監督助手:辻幸男
企画制作:佐藤春江