東京演劇集団風とウジェーヌ・イヨネスコ劇場による共同制作
ばかばかしくも悲しい、瀕死の王さまの混乱の悲喜劇―。

ウジェーヌ・イヨネスコの代表作『瀕死の王さま』は、2003年から交流を続けてきたモルドバのウジェーヌ・イヨネスコ劇場の代表作でもあります。
風とウジェーヌ・イヨネスコ劇場は、2003年〈第1回 ビエンナーレKAZE国際演劇祭〉『チェーホフ・マシン』(マテイ・ヴィスニユック作/ペトル・ヴトカレウ演出)での招聘以後、『ハムレット』(2004年初演/ペトル・ヴトカレウ 浅野佳成 共同演出)、『ジャンヌ・ダルク―ジャンヌと炎』(2008年初演/ペトル・ヴトカレウ 浅野佳成 共同演出)などの共同製作を繰り返してきました。『ハムレット』『ジャンヌ・ダルク』はともに青少年を対象とした全国巡回公演のレパートリーへと発展しています。
『瀕死の王さま』は演出のペトル・ヴトカレウ自身が王さま役を何度も演じ、イヨネスコ本人から功績が認められその名を劇団名として活動してきた彼が芸術上最も大切にしている作品です。長年の交流を通して、互いの芸術的思想と価値観をぶつけ合い、理解し合いながら実現した新たな共同制作。風の俳優とウジェーヌ・イヨネスコ劇場の演出・スタッフが、イヨネスコの自伝とも言える『瀕死の王さま』を通して、近代の断絶された人間関係の中でさまよう魂、うめきようのない叫びを発する現代人の姿を浮かび上がらせます。

一人の老衰した王さまが、ある日「あと1時間半で亡くなる」との死の宣告を受ける。王さまの国は、王政初期には90億の人口を誇っていたものの、現在は1000人ばかりの疲弊した国土になってしまっている。厳然たる支配者であり死地に赴くことなど微塵も認めない王さま。しかし、徐々に自らの死期を感じ、“死にたくない、頼むから死なせないでくれ”と懇願する。2人の王妃、侍医、家政婦兼看護婦、衛兵たちを巻き込みながら、ばかばかしくも悲しい瀕死の王さまの混乱の悲喜劇が繰り広げられる。

作:ウジェーヌ・イヨネスコ
訳:大久保輝臣
演出:ペトル・ヴトカレウ
舞台美術・衣裳:ステラ・ヴェレブチュアヌ
音楽:マリアン・スタルチェア
照明:坂野貢也