星の王子さまバナー

作:サン=テグジュペリ 訳:内藤 濯
『星の王子さま』は第二次世界大戦のさなか、1943年に、作者が亡命中のアメリカで出版され、いまなお年令を問わず全世界の人々に愛され親しまれている、フランスの作家サン=テグジュペリの名作です。

作品の冒頭に「すべての子どもだった大人へ」と献辞が書かれています。つまり子どものための童話ではなく大人のために向けられた《生きる意義》を見直すファンタジーです。

作家サン=テグジュペリは、プロペラ機時代の優れた飛行士でした。『星の王子さま』も、砂漠に不時着した作者自身の体験が生かされています。

見渡す限りなにもない砂漠に不時着した飛行士と、ちいさなちいさな星からやってきたという王子さまの出会いと別れを描いた、不思議な夢のような物語。今やこの地球上で、だれもが飢餓や貧困や差別と戦う意義を知りながら人間存在の危機感におののくしかない現代人。とかく時間に追われ、自分すらも見失いがちなさびしい人生。

いったい懸命に生きる価値とは何なのか。人間らしい「いのちの輝き」の一瞬に出会えるとはどういう時なのか。サン=テグジュペリは『星の王子さま』という「出会いの場」をわれわれに提示して、生命や友情や《生きる意義》への想像力を刺激するのです。「かんじんなものは目に見えない。心で見なければね」と。
星の王子さま写真01
構成演出:浅野佳成
音楽:八幡茂
舞台美術:石川源
照明:坂野貢也
効果:深川定次+風テクニカルワークショップ
衣装:出川淳子
星の王子さま写真02  
星の王子さま写真03
 
『星の王子さま』旅公演のなかで
『星の王子さま』の公演を続けていくなかで観客席の高校生たちが、一回一回の場を私たちと一緒になって創ってくれているのを感じています。
公演終了後の生徒との座談会で気づくことは、彼らの感じる力が、私たちの舞台を通して多くの発見をしていってくれていることです。
この原作がとっても大好きな女子生徒は「芝居を観る前、期待と同時に自分のイメージを壊してしまうのではないか、という不安感もあった。けれど楽しく観ることができてよかった。」という感想を話してくれました。劇団のものにとって嬉しい言葉です。
ある男子生徒は、「原作を読んだことも、読もうと思ったこともなかったけれど、この作品は、毎日が楽しくてしようのない子どもや、どこか偏ってできあがってしまった大人でもない、その中間点にいる、不安定な僕ら高校生にこそ、みせてほしい。」と上演が終わって言ってきました。私たち劇団としては、たくさんの大人の人、また子どもたちにも、その年代ごとの見方で『星の王子さま』を観てほしいと思っています。しかし目を伏せながらもあえて高校生へ、と伝えてきた彼は、小さな王子さまを自分の大切な存在として、あるいは支えとして、自分たちに必要なものなんだ、と感じているのです。
彼らの日常は、情報化の発達により、いまやどんな地方へ行っても、多様すぎる情報・娯楽やエンターテイメントであふれています。便利で、合理的にと、日々発展を遂げていく社会のなかで、なぜ彼らは充たされないものを感じとるのでしょうか。なぜ形のない、あまりに抽象的な、”星の王子さまの世界”にふれることを欲するのでしょうか
「見終わって、切ないし、哀しいのに、なぜだかあたたかいものを心に感じた。」という女生徒からの感想もありました。人間の感情にはたくさんのものが同居しています。哀しいこととあたたかいこと、相反するように見えることが同時にわき起こってくる瞬間。一言で言い切ることができないがために、それを”抽象的”と言うことで片づけてはいないでしょうか。
私は彼女の話から、”喜びの後ろに、悲しみがあって、出会いの向こうに、別れがある。涙と笑いは兄弟で、昨日があるから、明日がある”という、終盤に王子が歌う歌を思いました。相反するものが融合する、という存在の豊かさということが『星の王子さま』のひとつのテーマだと、発見してくれた女生徒に、私は教えられました。それは、”抽象的”だからこそふれることのできる世界なのではないでしょうか。
芸術鑑賞のご担当の先生や校長先生からは、「この作品をやってよかった」と、楽屋を訪ねていただく機会が多いです。
その理由として「うちの生徒には難しいと思っていた。けれど、分かりやすくてやさしいセリフの奥に、生徒一人一人が深いなにかを心に感じていることが伝わってきた。」という声が多く聞かれます。
この物語の世界に、私たちの舞台をとおして出会ってくれていること、そこから自分が、いま何を感じられるのかを、真剣に考えようとしている生徒たちのまなざしをしっかり感じられる公演が続いています。
上演の場では、(とても儚いけれど、とても大切なことを、若い観客たちと共感できたら… ) と願いつつ、”星の王子さま”を観客のなかに存在させようと感じるこの頃です。
(飛行士役 緒方一則)
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