いま、ひとりの少女が声をあげた―

 『ジャンヌ・ダルク-ジャンヌと炎』は、芸術監督 浅野佳成が「日本の若い観客のために」と依頼し、それに応えてマテイ・ヴィスニユックが書き下ろした作品です。ウジェーヌ・イヨネスコ劇場との共同製作により、2008年4月にモルドバで初演(プレミアム公演)を行いました。

放浪役者の一行がやってくる。そして、ジャンヌ・ダルクの物語を始める。
フランスの王子シャルル7世がランスで戴冠式を行い、イギリス軍をフランスから追い出すようにという〝声〟を聞いた農民の娘、羊飼いの乙女ジャンヌは、神の命じたシノンの街を目指していく。
王子シャルルとの接見で自ら聞いた〝声〟を伝え、王家、兵士たち、民衆、フランスの勇気を駆り立てたジャンヌは騎士の身分となり、オルレアンの戦いに勝利する。戴冠式を行う王太子、人々の心を掴むジャンヌ。
しかし、コンピエーニュ城の戦いでジャン・ド・リュクサンブール伯爵の捕虜となり、さらにはイギリス軍に金で売られてしまう。
そして、ジャンヌは魔女裁判にかけられ火刑となる。

 600年前、農民の娘ジャンヌは神の声に導かれ、戦争と貧困、疫病にあえぐフランスを救いました。しかし、政治という私利私欲によって彼女は火刑に処せられます。ひとりの少女の信念は、いまを懸命に生きようとする人々の内なる声に呼びかけ、生きることの勇気と自由を問い続けます。
「声をあげる機会の少ない世界中の若い人たちに、ひとりの少女が起こした〈奇跡の物語〉を、そして声をあげることの重要性を知ってほしい」という芸術監督 浅野佳成の呼びかけに答え、日本、フランス、モルドバ、3国の共同制作によって生まれたレパートリー。

   拠点劇場レパートリーシアターKAZEでは、2009年《ビエンナーレKAZE演劇祭 2009》にて、マテイ・ヴィスニユック作『戦場のような女』『フランクフルトに恋人がいるサックス奏者が語るパンダの物語』『年老いたクラウン』とともに本邦初演。2014年5月からは全国の青少年を対象とした全国巡回公演をスタートさせています。

作:マテイ・ヴィスニユック
訳:志賀重仁
演出:浅野佳成
演出協力:ペトル・ヴトカレウ
舞台美術:
ステラ・ヴレブチュアヌ