旅公演日記

旅公演日記2008春

肝っ玉おっ母とその子供たち

作:ベルトルト・ブレヒト 上演台本・演出:浅野佳成/関西・中国・四国・九州地方ほか

<キャスト>
肝っ玉: 辻由美子
料理人: 柳瀬太一
従軍牧師: 田中悟
イヴェット: 柴崎美納/仲村三千代
アイリフ: 鈴木亮平
スイスチーズ: 栗山友彦
カトリン 稲葉礼恵/白根有子
徴兵係・書記ほか: 白石圭司
曹長・兵士ほか: 高橋征也

Touch~孤独から愛へ

作:ライル・ケスラー●演出:浅野佳成/東北・関東・甲信越地方ほか

<キャスト>
トリート: 佐野準
フィリップ: 佐藤勇太
ハロルド: 酒井宗親

『肝っ玉』隠岐の島へ
2008/08/05

島根県は毎年のように公演で訪れているが、隠岐の島は公私共に初めての地。“初めて”というのはいつだって心ときめくものがある。
7月13日(日)松江市七類港から西条港へ上陸。そして隠岐島文化会館での仕込み。舞台の魅力を最大限に生かしたいと努力するのはいつものこと。この日も照明のバトンを仮設したり、舞台上のすのこに上がったり、様々な工夫が。
仕込みを終え海辺の宿へ。部屋の窓からは海が見え、時間の流れもゆったりと感じられた。
翌日、隠岐高校・隠岐水産高校合同の演劇鑑賞会。開場前に誰もいない客席を見ながら、舞台との距離は近いと感じたが、芝居が始まるとその感じはさらに強くなる。静かな場面の客席の息づかい、カーテンコールで向き合う客席の顔。「ふだん生の舞台を見ることのない私たち・・・」代表の生徒さんの挨拶に、生徒の皆さんにとってこの日の観劇が非日常のこと、その時間を舞台と客席がつくったと改めて思う。
フェリーに乗り遅れたら明日にしよう──と観光パンフレットにはあったけれど、乗り遅れるわけにはいかない。私たち風が次に行く機会を待ってくれていると思いたい。


清水菜穂子
旅の折り返し地点
2008/08/01
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東京・城北埼玉中学校から始まったこの週は岩手・大東高校、同じく岩手・紫波第一中学校、そして栃木・那須高原海城中学・高校と関東~東北を縦断しました。

この週は、今旅の折り返しにあたる週で、個人的にも印象深い週でした。

特に印象に残っているのは大東高校の座談会で「僕はフィリップがハロルドに初めて肩を抱かれるシーンで、男同士で気持ち悪いと思いながらも、そこで感動して泣いてしまった。そして、トリートの感情を抑えられない気持ちがよくわかる。」と話していた生徒の言葉でした。

彼にしかない何かを感じての言葉だったのでしょう。

こうして一度きりの公演を通して、一人一人がそれぞれの感性で演劇に触れるなかで、自分を新しく発見したり、出会ったりする。そして感じたことを話すことで、相手との出会いがある。

この、公演が終わったあとの出会いを大切にしてほしいと思います。また僕自身も大切にしたいと思います。

今の時代や社会に生きるなかで、一人一人が違ったものを抱えながら「Touch~孤独から愛へ」の上演に触れて、それぞれの「Touch」に出会ってくれたらと思います。

そんな、ひとつの出会いのかけがえなさを強く感じた週でした。


佐藤 勇太
米子合同公演を経て・・・
2008/07/31
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4月下旬から始まった旅公演も終盤に入り残る公演もあとわずか、今週は境港、米子市内の高校の合同公演を迎えました。

たくさんの笑いで解れた空気と、ぎゅっと空気が締まるような集中力を、舞台上と客席とでのやり取りの中から感じられた公演でした。
また、米子では公演後コミュニケーションワークショップを行いました。中でも失敗の中から笑いが生まれた、ジェスチャーで行う伝言ゲームが印象に残りました。自分が意図していたこととは違い、思わぬものへと形を変えていく。見ている人にはその失敗が可笑しさを生む。自分がどうするかということより、相手が何を伝えようとしているのかを受け取ろうとする姿に参加した生徒、劇団員共に感じることがあったのではないでしょうか。
他人とのコミュニケーションが稀薄だと言われる中、今回の公演やワークショップを通して、相手のために何ができるか、自分もそうやって必ず誰かに支えられている、そんなことが心に残る一週間でした。


田中 悟
あとから生まれてくる人たちに
2008/07/31
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肝っ玉の旅公演も6月の第三週に入り、いよいよ後半を迎えました。

島根県の情報科学高校から始まり、岡山の山南中学校、奈良の関西中央高校そしてもう一度、岡山での勝山中学校、最後に大阪の常翔啓光中学・高校の公演を終えました。

僕自身、この一週間は思いで深く、肝っ玉という作品を通して、また新たな出会いができたと思います。

僕達の演じる肝っ玉の時代に生きる人間も、現代を生きる人間も、きっと未来への希望、生きる勇気や不安を持って生きているんだと思います。
 
『あとから生まれてくる人たちに』

歴史の教科書には載ることもない、時代を生きてきた人間たちの生き様に、若い観客たちが出会うことで、戦争やその中で生き続けた人間の姿を見つめ、今の時代を一人ひとりが作り出してくれたらと思います。


白石圭司
九州は大分へ!
2008/07/29
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『Touch』の春のツアーは関東・東北・甲信越地方を巡っている。しかし、この三ヶ月のツアーの中で一校だけ九州の公演が・・・今年で四年連続の公演を迎える大分大学教育福祉科学部附属中学校だ。

個人的にも三年連続の来校となり、今年はどんな出会いがあるのか期待に胸を膨らませながら・・・早朝七時、『Touch』メンバーは大分港に上陸した。この時期に九州、しかも体育館での公演ということで若干暑さが心配ではあったが、曇り空のおかげで過ごしやすさすら感じる。

いよいよ舞台の開演。客席は今年もまた暖かく私たちを迎えてくれた。一幕一場が終わっただけでも客席からは割れんばかりの拍手・・・そしてその盛り上がりはクライマックスまで続く。

公演後は例年通り三年生が座談会と片付けの二班に分かれ、ツアーメンバーとの交流が始まる。観劇の熱も冷めやらぬままの彼らは私たちに元気と発見をあたえてくれた。一年生で『肝っ玉おっ母とその子どもたち』、二年生で『Hamlet』を観劇した彼らは今回の『Touch』を楽しみにし、期待以上のものを感じてもらったように思う。生徒たちの笑顔・明るさから僕はそう感じた。

この附属中学校での毎年の取り組みは、勿論多くの先生方に支えられている。学校現場での情熱のおかげで毎年彼らに出会い、交流が出来ることに感謝しつつ、そして来年の公演を早くも楽しみにしながら・・・夜七時半、メンバーは帰りのフェリーに乗り込んだ。


佐野 準