旅公演日記
旅公演日記2006秋
星の王子さま Le Petit Prince
作:サン=テグジュペリ●演出:浅野佳成/関西・関東・東北・甲信越・九州地方
| <キャスト> | |
|---|---|
| 王子: | 白根有子 |
| 飛行士: | 西垣耕造/緒方一則 |
| ヘビ: | 酒井宗親 |
| キツネ: | 工藤順子 |
| 花: | 仲村三千代 |
| 星の住人: | 栗山友彦 |
| バオバブ | 田中賢一 |
肝っ玉おっ母とその子供たち
作:ベルトルト・ブレヒト●演出:浅野佳成/九州地方
| <キャスト> | |
|---|---|
| 肝っ玉: | 辻由美子 |
| 料理人: | 柳瀬太一 |
| 牧師: | 中村滋 |
| イヴェット: | 柴崎美納 |
| アイリフ: | 佐野準 |
| シュワイツ: | 佐藤勇太 |
| カトリン: | 稲葉礼恵 |
| 徴兵係・書記ほか: | 白石圭司 |
| 曹長・兵士ほか: | 高橋征也(劇団芋屋) |

「肝っ玉」は1933年に書かれた作品ですが、その中に描かれている人間性や社会が、現代の状況の中に共感できる事がたくさんあります。
その中で「大負けの歌」から
「さからわないで めだたないで あせらないで 耐え忍ぶの つらくても我慢して 不相応なことはしちゃだめってこと」
私はこの歌を聴いて、学生時代の出来事や社会人になっておこった事など、今まで生きてきた世界や社会に共感しました。
でも、共感するだけでなく、疑問をもち、迷って考えて、そして私は考えて自分の決めた道を歩んでいくのだと感じています。
観客の人たちが、その場その場でどんな事を感じているのかはわかりません。
でも、自分の世界や今の社会を根底から考える視線で見ていってもらいたいです。

この週の王子さまの旅は熊本県と佐賀県が舞台です。
このところ、教育現場をめぐる暗いニュースが相次いでいますが、実際各学校を訪れてみると、子供たちも先生方も明るくて元気一杯、ぶつかれば跳ね返ってくる弾力性に満ちていて、劇団員もたくさんの勇気と希望をもらいました。
熊本・山鹿市の三岳小学校では、カーテンコールで子供たちが「世界がひとつになるまで」という歌を歌ってくれました。
手話を交えて懸命に歌う彼らの姿を見て、僕たちはみな舞台上で号泣!してしまったのですが、その体育館中がひとつになった瞬間に、僕は「芸術」とは一体何だろう、と考えました。
手元にある辞書をひいてみます。
「芸術とは、他人と分かち合えるような美的な物体、環境、経験をつくりだす人間の創造活動、あるいはその活動による成果をいう」
あの美しい瞬間はまさに本物の「芸術」的瞬間だったのだと僕は思います。
さまざまな出会いを重ね、さまざまな人たちと「芸術」を分かち合うことで、「世界がひとつになる風景」をひとつひとつ描き出していきたい、と考えた貴重な経験でした。

11月も終盤にかかり、九州は冬が始まろうとしています。
「肝っ玉」は今週で35ステージを終えました。
ブレヒトの詩の中で私たちへのメッセージ
「殺しあったり、騙し合ったり。いじめたり、もう怯えながら暮らす人などきっと誰もいないと思う」
しかし現代ではどうでしょう?
観客の反応はとても素直でざわめきが起こります。
その瞬間彼ら、彼女らの中に、ブレヒトの言いたかったこととは違う形ではあるのかもしれないが今を生きている彼ら、彼女らなりの感じ方で疑問が生まれ、批判しているのがはっきりわかります。そこには演じるもの、観るものの関係とは少し違った対等な、暖かく、厳しい関係が生まれています。
その関係の中で自分たちが何をしてあげられるのか?自由にものを創ることで何を伝えられるのか。これからも考えていこうと思います。
今、生きている彼らには歴史の出来事だけでなく、目の前で起こっている人間のおもしろさや悲しさ、みじめさなどを伝え、自分というものをもう1度振り返って強く持ってほしい。
確かな手ごたえを感じながら残り約20ステージ、若い観客達とどんな発見をしていくのか、とても充実した毎日を送っています。

関東での公演を終え、11月5日、「星の王子さま」旅班は九州に上陸!
今年も、文化庁 本物の舞台芸術体験事業、学校参加型の公演が始まりました。今回は福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県の4県。13校の小・中・高校での公演です。
通常の公演と違うのは、ラストシーンの歌「僕は行く」を全校生徒が一緒に歌い、消えてしまった王子に呼びかける飛行士の台詞「おーい、おーい、どこへ行ってしまったんだよ」を全校で一緒に呼びかけるということです。
また、星の住人:呑み助、地理学者の役を先生が演じたり、卒業を控えた最上級生などが王子、飛行士と一緒に「僕の旅は続く」の歌を歌います。ブラスバンドがある学校は「僕は行く」を生演奏してくれたりと、学校によって参加の仕方はさまざまです。
「本物を観る機会が本当に少ないんです。ぜひ子供たちに本物に触れさせたい。」
先生たちの言葉を聞くたびに“本物”とは何なのかと考えさせられます。生徒さんたちが歌う姿、ひたむきで真っ直ぐな視線にこちらがどきっとさせられることも多くあります。
“嘘”や“にせもの”がいつもどこかに入り込んでくる日常。一緒につくる一度きりの舞台では、子供たちに向かい合う私たちの姿がいつも“本物”であるようにと思う毎日です。
文化庁公演、第一週目は福岡県・若松中学校、折尾高校、宇美東中学校、次郎丸中学校、田村小学校での公演でした。
★写真は次郎丸中学校の生徒さんとキツネ役の工藤さん。

9月下旬からスタートした『星の王子さま』の旅公演も終半にさしかかりました。前半の旅公演を通して感じたこと、それは『星の王子さま』は、先生方から生徒さんひとりひとりへの大切なメッセージであるということでした。開演前の校長先生や担当の先生言葉が心に残ります。
「昨日の夜もう一度“星の王子さま”を読み返してみました」
「サン=テグジュペリが大戦中に考えたことをぜひ感じとってほしい」
「若かった頃読んで印象的だった言葉をぜひ君達も受け止めてほしい」
1ステージの舞台には様々な人の様々な想いがこめられています。
『星の王子さま』の舞台が先生方からのメッセージとなり、生徒さんひとりひとりの心に響き、想いが交歓される場になれば素敵です。様々な想いを受けとめながら、私たちの公演は終半に向かいます。各校の先生方の素敵な想いに触れられることも、私たちの大きな歓びなのだと思います。
今週は、千葉、群馬、茨城、福島の高校4校での公演でした。
★写真は福島県・新地高校、生徒会のみなさんとの座談会より。